然光が差し込む明るい診察室で、穏やかに患者と接する久保田潤一郎院長。壁や棚には趣味のカメラで撮った風景写真が飾られ、診察室にいること忘れてしまいそうなほど、リラックスした雰囲気に包まれている。久保田院長は診察中、まず、患者の話をじっくり聞く。
「エステとは違って、美容外科に行くのは勇気がいることだと思うんです。さんざん迷って一大決心をして…いろいろな思いを抱えていらっしゃいますよね。まずはその思いを存分に話してもらいます。途中で口をはさむと話がそれていくこともありますから、とことん聞いたあとで、こちらの意見を伝えるようにしています」
久保田院長が医師として目指しているのは、患者の“社会復帰”だ。社会復帰するためには、体の機能が正常であるだけではなく、見た目も条件になる。見た目とは、言い換えれば美容だ。自分の外見を気にして家に引きこもっていたら、社会から切り離されてしまう。美容外科によって見た目に自信を持つことができたなら、社会に出て働くことができる。
「人は社会の中で何かしら役に立ってこそ、生きていることを実感できるのではないでしょうか」

ともと形成外科を選んだのも、社会復帰を手助けできる診療科だと思ったからだ。28年前、医学部を卒業した久保田院長は慶應義塾大学医学部の形成外科学教室に入室する。

「脳外科や精神科にも興味があったのですが、すべての世代の人に対してダイレクトに社会復帰を手助けできるのは形成外科だと思ったんです。当時の形成外科はすべての大学病院にある診療科ではなく、まだ新しくマイナーでした。だからこそ、チャンスがあるとも思いました。自分が道を切り開いていけると…」
その予感は見事に的中。入室した1年目から、手術のアイデアが採用された。ほかの診療科では考えられないことだ。また、日本でトップの技術を誇る形成外科医がずらりと揃った同大の教室で、ハイレベルな手術の技術を吸収することができた。ただし、寝る間もないほどハードな毎日だったという。夜中の2時過ぎに帰宅し、翌朝の7時には病院で入院患者に採血をしているという生活。
「とにかく必死だったので、やめたいと思う間もなかったですね」
ころが入室して1年ほど経ったころ、肝炎が発覚する。半年間の休養を余儀なくされた。復職後は時間に余裕がある他の科への異動も勧められたが、形成外科にこだわった。
「病気になるまでは、大きな使命感を背負って、必死で突っ走っていたような気がします。でも休んでみて、僕がいなくても業務には何の支障もないんだ、と。それを見せつけられたことで、気負いがストンとなくなりましたね。また、ずっと付き合っていかなければならない病気ですから最初は絶望感もありましたが、徐々に生きているうちは思いっきりやってみようと思えるようになりました。医師の使命は、患者のために働くことですから、ただそれだけを全うしようと」

大に7年近く勤務したのち、母校の杏林大学へ。人員不足のため、請われてのことだった。ここで久保田院長は、まだ新しかった母校の形成外科のレベルを上げることに貢献する。
弱い光エネルギーを利用したレーザー治療など、さまざまな実験にも取り組んだ。多血小板療法に出会ったのも大学病院でのこと。これを美容に応用して、世界で初めて開発したのが「ACR療法」だ。
自分の血液を利用して顔の皮膚細胞を再生し、若々しい肌に生まれ変わらせるというもの。シワやたるみを減らすほか、これまで改善が難しいとされていた目の下のちりめんジワにも効果があるという。現在イギリス、アメリカ、タイなど世界各地に広まっている治療法だ。久保田院長の指導を受けるために、海外から訪れる医師も少なくない。
「技術はできるだけ公開していきたい。新しい治療方法なので批判も質問もあるでしょう。そういうやりとりを重ねながら、皆で改良していきたいと思っています」
保田院長の開拓者精神は、開業した今も変わらない。この先、より力を注いでいきたいのは、予防医療だという。

「最終的には手術をしなくてすむことが、理想です。現状、病気の予防は医師が積極的に関わるというより、患者の責任になっています。保険診療にしばられない美容外科だからこそ、提供できる予防医療があると思うんです。スポーツクラブなどと組めば、予防医療として1つのムーブメントになるのではないでしょうか」
すでにクリニックでは、予防医療を実践している。「ACR」療法や「高気圧高濃度酸素療法」などもその1つだ。
また、予防医療の大きな要素である栄養指導も久保田院長が自ら行っている。
患者の中には極端なダイエットをしている人も多いので、食事日記を書いてもらったうえで、細かく改善方法を指摘していくそうだ。この指導は、自身の体験に基づいたものだ。
「実は以前僕自身が、糖尿病、高脂血症、高血圧、脂肪肝をずらりと指摘されたことがあるんです。後輩に糖尿病を診ている医師がいるので、どうすればいいのかと聞いたら『学生時代の体重まで、落としてください』と。
それには10kg以上ダイエットしなければいけなかったので、やせる方法を聞いたら『それは自分で考えてください』といわれました。
医学部の教育に栄養学はないんですね。それからは、独学で栄養学を勉強しつつ、やせる方法を自分の体を使って実験をしているようなもの。肉類をやめて炭水化物の量を半分に減らしたら、半年で8kgやせました。実験だと思えば、ダイエットはつらくないんです」
長年の大学病院勤務で磨かれた技術、一人ひとりに合わせた細やかな治療と生活指導…久保田院長の持つ幅広い引き出しは、患者が抱えてきた悩みを解決することだろう。


